都田川水系

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流域の自然環境

都田川流域全体の特徴として、多くの貴重種を含む生物相の豊かさにおいて県内随一であることがあげられる。貴重種に限らず、ヒメボタルやゲンジボタルの美しい乱舞、流水性のトンボ類、イシガメの群に代表されるように、水辺に依存する生物の生息密度が概ね高く、多様な生態系を有しているため、地域住民の川への関心は強い。また、流域は地域特性から、次の4つに区分でき、各地域の自然環境の特徴は次のとおりである。

 都田川水系の地域区分

図1-7 都田川水系の地域区分(出典:都田川水系河川整備計画)

(1)浜名湖北部地域

都田川や井伊谷川に代表される浜名湖北部地域では、平瀬や淵などを好むアユ、オイカワ、淵やゆるい流れなどを好むウグイなどが魚類の典型種としてあげられ、広く分布している。また、砂礫床で瀬や淵が連続する流れとなる中流域では、砂礫河床や転石などを生息または産卵環境として利用する種が多く、静岡県内で唯一生息が確認されている絶滅危惧ⅠA類(静岡県版レッドデータブック[以下、「静岡県RDB」という)のヤリタナゴ(平成27年4月に静岡県希少野生動植物保護条例※1の規定に基づく指定希少野生動植物に指定)や、伏流水が湧き出る箇所に生息しているスナヤツメ北方種(環境省レッドリスト・絶滅危惧Ⅱ類、静岡県RDBではスナヤツメ(絶滅危惧ⅠB類))が確認されている。
植物では、下流から上流域までヨシやツルヨシ等の抽水植物群落が生育し、これらを利用するは虫類や鳥類が見られる。また、都田川の浜名湖合流点付近には、河岸に沿ってヨシ原が広がるとともに、貴重種として塩性湿地を好むウラギク(静岡県RDB・絶滅危惧Ⅱ類)などの植物や、ヒヌマイトトンボ(静岡県RDB・絶滅危惧ⅠA類)などの昆虫類が多く生息している。

ヤリタナゴ

ヨシ群落

アユ

スナヤツメ北方種

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※1 静岡県希少野生動植物保護条例(平成23年4月1日施行):県内に生息し、又は生育する野生動植物が、生態系の重要な構成要素であり、自然環境の一部として県民の豊かな生活に欠かすことのできないものであることにかんがみ、希少野生動植物の保護に関し必要な事項を定め、県、事業者及び県民等が一体となって希少野生動植物の保護対策を推進することにより、県内の生物の多様性を保全し、人と野生動植物とが共生する豊かな自然環境を県民共有の貴重な財産として次代に継承することを目的に制定された条例。条例に違反すると懲役や罰金等の罰則規定もある。

(2)浜名湖西部地域

入出太田川や笠子川などに代表される西部地域では、平瀬や淵などを好むアユ、オイカワなどが魚類の典型種としてあげられ、広く分布している。また、笠子川流域では絶滅が危惧されているカワバタモロコ(静岡県RDB・絶滅危惧ⅠA(平成27年4月に静岡県希少野生動植物保護条例の規定に基づく指定希少野生動植物に指定))が確認されているほか、一部河川の中流域等では、アカザ(静岡県RDB・絶滅危惧ⅠB類)やトウカイコガタスジシマドジョウ(環境省レッドリスト・絶滅危惧ⅠB類、静岡県RDBではスジシマドジョウ小型種東海型(絶滅危惧ⅠB類))が確認されている。
植物では、川岸にヨシ、ツルヨシ等の抽水植物群落が生育している。鳥類では、サギ類が生息場、休息場、餌場の一部として利用している。
この他、北部地域、西部地域にかけてナガレホトケドジョウ(静岡県RDB・準絶滅危惧)が確認されている。

ツルヨシ群落

(3)浜名湖東部地域

新川に代表される東部地域では、汽水環境を好むハゼ類やボラ、緩流を好み止水域などに生息するニゴイ、ギンブナなどが魚類の典型種としてあげられる。また、一部河川の中流域では、ホトケドジョウ(静岡県RDB・絶滅危惧Ⅱ類)等の貴重種の生息が確認されている。
植物では、川岸にヨシやクサヨシ等の抽水植物群落が生育し、これらの抽水植物群落を鳥類や両生・は虫類が利用している。鳥類では、カワセミなどが休息場や餌場の一部として利用するほか、両生類ではトノサマガエルの生息も確認されている。植物では、河川上流部でハタベカンガレイ、カワヂシャ群落が繁茂している。

 

ホトケドジョウ

佐鳴湖湖岸ヨシ原

トノサマガエル

(4)浜名湖

浜名湖では典型的な魚類として、コノシロ、サッパ、サヨリ、クロダイ等の海産魚の他、ハゼ類やスズキ、ボラなど汽水湖に生息する種が分布している。また、浜名湖で注目する必要がある魚類は、干潟の泥底中に生息するチワラスボ(静岡県RDB・絶滅危惧Ⅱ類)が挙げられ、またかつて記録されたトビハゼ(静岡県RDB・絶滅危惧ⅠA類)やヒモハゼ(静岡県RDB・絶滅危惧Ⅱ類)は、現在情報が不足しており、見られなくなっている。
植物では、湖岸にヨシ原が繁茂するとともに、ミクリが確認されている。鳥類では、チゴモズ(静岡県RDB・絶滅危惧ⅠA類)などのほかヨシゴイ、ミゾゴイ等の絶滅危惧ⅠB類(静岡県RDB)の生息が確認されている。昆虫類はベッコウトンボ(静岡県RDB・絶滅危惧ⅠA類)が確認されている。陸・淡水産貝類については、ある程度の塩分濃度が必要で、淡水では生息できないウスコミミガイ(静岡県RDB・絶滅危惧ⅠA類)や、干潟にはシギ・チドリ類、アサリなどの二枚貝が確認されている。

ヨシ原

ミクリ属

(5)自然公園等

都田川流域では、浜名湖県立自然公園が浜名湖一帯で全面的に指定されており、さらに天竜奥三河国定公園も流域にわずかに含まれている。また、鳥獣保護区は14地区、指定猟具(銃)使用禁止区域(旧銃猟禁止区域)は19地区指定されている。

自然公園位置図

図1-8 自然公園位置図(出典:都田川水系河川整備計画)

鳥獣保護区域図

図1-9 鳥獣保護区域図(出典:都田川水系河川整備計画)